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管理組合理事長アンケートまとめ:AI管理員は省人化の切り札になりうるか

〜〜管理組合理事長・理事経験者28名に聞いた「現場業務」とAI管理員への期待〜〜

マンションの高経年化と、マンション管理組合役員の高齢化が進む中、現場では「いかに人手をかけずにマンション管理を回していくか」が大きな課題となっています。加えて、管理会社側の人手不足や人件費の高騰もあり、省人化と管理費の抑制を同時に実現することが、これまで以上に求められています。

一方で、マンションの管理業務の多くは、各物件ごとの管理規約や使用細則、過去の経緯、慣習に支えられた“ロングテール業務”で成り立っており、画一的なマニュアルや汎用システムだけでは対応しきれない領域が全体の約8割を占めているのが実情です。ここにこそ、省人化の難しさがあります。

こうした背景から、**人手不足を補いながら、管理の質を落とさずに管理費の削減も目指せる新しい選択肢として「AI管理員」**が注目されはじめています。AIが管理員や理事の業務の一部を代替・支援することで、省人化の“切り札”となりうるのか――その可能性を検証するには、まず現場のリアルを正しく把握する必要があります。

そこで今回は、マンション管理の省人化を進めるにあたり、マンション管理組合の理事長・理事として現場運営を担ってこられた方々に対し、3つの質問を行いその回答を整理しました。

1. 理事会従事時の主な職務カテゴリ

まず、理事長・理事として「どんな業務にどれくらい関わっているのか」を整理した結果が、次のグラフです。

図1:理事会従事時の主な職務カテゴリと回答者比率(概算)

※アンケート回答をもとにした概算比率です(複数回答)。

グラフから分かるように、理事長・理事の業務は、

  • 理事会・総会の開催・運営(約40%)
  • 大規模修繕・長期修繕(約35%)
  • 見積・予算・会計(約25%)
  • 管理会社・管理員との調整窓口(約20%)
  • その他(日常運営・問い合わせ対応など)(約15%)

といった領域に大きく分かれます。特に、理事会・総会の運営大規模修繕・長期修繕が理事の負担の中心であり、これに見積・予算・会計などの「お金周りの検討業務」が加わる構図が見えてきます。

一方で、「組合員からの問い合わせ対応」や「日常運営業務」は一つひとつは小さいものの、日々細かく発生しており、いわゆる“ロングテール業務”として理事の負担になっていることが分かります。


2. 組合員からのよくある照会内容

次に、「組合員からどのような問い合わせ・相談が多いのか」を整理した結果がこちらです。

図2:組合員からのよくある照会内容と回答者比率(概算)

※アンケート回答をもとにした概算比率です(複数回答)。

  • 共用部・設備+駐車場・駐輪場(約45%)
  • 管理員・管理会社・コンシェルジュへの意見・要望(約60%)
  • 近隣トラブル・騒音・マナー(約30%)
  • ゴミ出し・ゴミ置き場のルール(約25%)
  • 防犯・防犯カメラ関連(約20%)
  • その他(会計・専有部・災害対応など)(約15%)

特徴的なのは、「管理員・管理会社・コンシェルジュへの意見・要望」が、どのテーマにも横串で現れていることです。例えば、共用部の不具合や騒音トラブル、ゴミ出しマナーの問題など、個別テーマとしては別々の項目であっても、

  • 「なぜ対応してくれないのか?」
  • 「もっとこうしてほしい」

といったかたちで、最終的には管理会社や管理員への評価・期待の話に結びつきやすい構造になっています。

こうした問い合わせは、まず管理員・管理会社・コンシェルジュが一次受付を行い、難しい案件やグレーな案件は、理事長・理事会にエスカレーションされていきます。つまり、「相談の入口」は管理員や管理会社であり、最終的な判断・合意形成は理事会が担っているのが現状です。


3. 組合員からの照会対応フロー(典型パターン)

アンケート結果を整理すると、多くの管理組合で、組合員からの照会対応は次のような流れで処理されていることが分かりました。

相談受付 → 初期対応・整理 → 理事・理事会での検討 → 対応の実施・周知

  1. 相談受付
    まずは管理員・コンシェルジュ、管理会社フロント/コールセンター、投書箱などが窓口となり、内容によっては理事長・理事が直接相談を受けるケースもあります。
  2. 初期対応・整理
    管理規約やルールで明確に定められている内容であれば、管理員・管理会社がその場で回答・対応します。
    駐車場・駐輪場の契約や押印など、理事長の承認が必要なものは、この段階で理事長に確認が回ります。
  3. 理事・理事会での検討
    グレーな案件、金額の大きい案件、トラブル性の高い案件などは、管理会社から理事長・担当理事、さらに理事会へと共有され、対応方針を協議します。
    防犯カメラ映像の確認などセンシティブな内容は、理事長判断や警察など公的機関からの要請がある場合に限って対応する運用が一般的です。
  4. 対応の実施・周知
    理事会・総会で方針が決まった後、その具体的な実務(掲示物の作成・配布、業者手配、清掃・修繕の手配など)は管理会社が担います。
    組合員への周知は、掲示板や回覧、総会・理事会での報告、書面配布などを通じて行われます。

このように、表面上はシンプルな4ステップに見えますが、実際には「相談内容の整理」「ルールの照合」「関係者への確認・調整」「文章作成・掲示」など、多くの細かな作業と現場ノウハウが積み重なっています。


4. AI管理員に期待される役割・機能

最後に、「人手不足解消・現場ノウハウ継承策として、AI管理員にどのような役割・機能を期待するか」を整理した結果が、次のグラフです。

図3:AI管理員に期待される主な役割・機能と回答者比率(概算)

※アンケート回答をもとにした概算比率です(複数回答)。

  • ナレッジ化・検索(事例・議事録・履歴) … 約30%
  • 申請・予約・各種手続きの自動化 … 約20%
  • ノウハウ・運営知の継承 … 約15%
  • 問い合わせ・FAQの一次対応 … 約15%
  • 高齢者にも使いやすいUI/対面との両立 … 約10%
  • 他物件ベストプラクティス・委託費削減・防犯など … 約10%

ここから見えてくるのは、AI管理員への期待は単なる「チャットボット」ではなく

AI管理員に期待される主な役割

  • 管理規約・使用細則・議事録・過去トラブルなどを集約したマンション専用ナレッジベース
  • 共用施設予約や車庫証明発行などの手続きの自動化
  • 理事・管理会社担当・管理員が替わっても続いていくノウハウの継承
  • 組合員からの問い合わせに対する一次対応・振り分け役

といった、マンション運営の“土台”を支える機能に集中しているという点です。

言い換えれば、AI管理員は「人間の管理員や理事を置き換えるロボット」ではなく、マンション固有の知恵を蓄え続ける“記憶装置”であり、誰でもいつでもアクセスできる“相談窓口”として期待されています。

こうした役割をAIが担っていくことで、省人化と管理品質の両立、さらには管理費の適正化・削減につながっていく可能性が見えてきます。