〜〜管理組合理事長・理事経験者42名に聞いた「現場業務」とAI管理員への期待〜〜
マンションの高経年化と、マンション管理組合役員の高齢化が進む中、現場では「いかに人手をかけずにマンション管理を回していくか」が大きな課題となっています。加えて、管理会社側の人手不足や人件費の高騰もあり、省人化と管理費の抑制を同時に実現することが、これまで以上に求められています。
一方で、マンションの管理業務の多くは、各物件ごとの管理規約や使用細則、過去の経緯、慣習に支えられた“ロングテール業務”で成り立っており、画一的なマニュアルや汎用システムだけでは対応しきれない領域が全体の約8割を占めているのが実情です。ここにこそ、省人化の難しさがあります。

こうした背景から、**人手不足を補いながら、管理の質を落とさずに管理費の削減も目指せる新しい選択肢として「AI管理員」**が注目されはじめています。AIが管理員や理事の業務の一部を代替・支援することで、省人化の“切り札”となりうるのか――その可能性を検証するには、まず現場のリアルを正しく把握する必要があります。
そこで今回は、マンション管理の省人化を進めるにあたり、マンション管理組合の理事長・理事として現場運営を担ってこられた方々に対し、3つの質問を行いその回答を整理しました。
Contents
0.属性
インタビューを行った管理組合理事長等の居住地とマンション規模は以下の通りです。
0-1. 居住地(都道府県)

0-2. マンション規模(戸数:41件)
- 〜49戸:14(34.1%)
- 50〜99戸:10(24.4%)
- 100〜199戸:12(29.3%)
- 200戸以上:5(12.2%)

1. 理事会従事時の主な職務カテゴリ
まず、理事長・理事として「どんな業務にどれくらい関わっているのか」を整理した結果が、次のグラフです。

図1:理事会従事時の主な職務カテゴリと回答者比率(概算)
※アンケート回答をもとにした概算比率です(複数回答)。
グラフから分かるように、理事長・理事の業務は、
- 理事会・総会の開催・運営:23名(54.8%)
- 大規模修繕・長期修繕/工事:17名(40.5%)
- 管理会社・管理員との調整窓口:15名(35.7%)
- 見積・予算・会計などお金周り:14名(33.3%)
- その他(日常運営・問い合わせ対応等):6名(14.3%)
といった領域に大きく分かれます。特に、理事会・総会の運営と大規模修繕・長期修繕が理事の負担の中心であり、これに見積・予算・会計などの「お金周りの検討業務」が加わる構図が見えてきます。
一方で、「組合員からの問い合わせ対応」や「日常運営業務」は一つひとつは小さいものの、日々細かく発生しており、いわゆる“ロングテール業務”として理事の負担になっていることが分かります。
2. 組合員からのよくある照会内容
次に、「組合員からどのような問い合わせ・相談が多いのか」を整理した結果がこちらです。

図2:組合員からのよくある照会内容と回答者比率(概算)
※アンケート回答をもとにした概算比率です(複数回答)。
- 駐車場・駐輪場:19名(45.2%)
- 共用部・設備の不具合/修繕:18名(42.9%)
- 近隣トラブル・騒音:14名(33.3%)
- ゴミ出し・ゴミ置き場:13名(31.0%)
- 生活マナー(ゴミ以外):8名(19.0%)
- 規約・ルール/工事申請:4名(9.5%)
- 費用・会計(管理費・滞納等):4名(9.5%)
- 防犯・セキュリティ:2名(4.8%)
- 共用施設予約:2名(4.8%)
特徴的なのは、「管理員・管理会社・コンシェルジュへの意見・要望」が、どのテーマにも横串で現れていることです。例えば、共用部の不具合や騒音トラブル、ゴミ出しマナーの問題など、個別テーマとしては別々の項目であっても、
- 「なぜ対応してくれないのか?」
- 「もっとこうしてほしい」
といったかたちで、最終的には管理会社や管理員への評価・期待の話に結びつきやすい構造になっています。
こうした問い合わせは、まず管理員・管理会社・コンシェルジュが一次受付を行い、難しい案件やグレーな案件は、理事長・理事会にエスカレーションされていきます。つまり、「相談の入口」は管理員や管理会社であり、最終的な判断・合意形成は理事会が担っているのが現状です。
3. 組合員からの照会対応フロー(典型パターン)
アンケート結果を整理すると、多くの管理組合で、組合員からの照会対応は次のような流れで処理されていることが分かりました。
- 一次受付:管理員/管理会社/フロントで受ける:21名(50.0%)
- エスカレーション:理事長/理事会に上がる:20名(47.6%)
- 規約照合・判断:11名(26.2%)
- 現地確認・業者手配:10名(23.8%)
- 周知(掲示・回覧・メール等):5名(11.9%)

このように、表面上はシンプルなフロー(順番)に見えますが、実際には「相談内容の整理」「ルールの照合」「関係者への確認・調整」「文章作成・掲示」など、多くの細かな作業と現場ノウハウが積み重なっています。
4. AI管理員に期待される役割・機能
最後に、「人手不足解消・現場ノウハウ継承策として、AI管理員にどのような役割・機能を期待するか」を整理した結果が、次のグラフです。

図3:AI管理員に期待される主な役割・機能と回答者比率(概算)
※アンケート回答をもとにした概算比率です(複数回答)。
- ナレッジ化・検索(規約/議事録/履歴/事例):15名(35.7%)
- 申請・予約・手続きの自動化:10名(23.8%)
- ノウハウ/運営知の継承:10名(23.8%)
- 問い合わせ・FAQの一次対応:5名(11.9%)
- 使いやすさ(高齢者配慮、対面・音声UI等):5名(11.9%)
- その他(防犯、ベストプラクティス、コスト削減等):3名(7.1%)
ここから見えてくるのは、AI管理員への期待は単なる「チャットボット」ではなく、
AI管理員に期待される主な役割
- 管理規約・使用細則・議事録・過去トラブルなどを集約したマンション専用ナレッジベース
- 共用施設予約や車庫証明発行などの手続きの自動化
- 理事・管理会社担当・管理員が替わっても続いていくノウハウの継承
- 組合員からの問い合わせに対する一次対応・振り分け役
といった、マンション運営の“土台”を支える機能に集中しているという点です。
言い換えれば、AI管理員は「人間の管理員や理事を置き換えるロボット」ではなく、
マンション固有の知恵を蓄え続ける“記憶装置”であり、誰でもいつでもアクセスできる“相談窓口”
であることが期待されています。

こうした役割をAIが担っていくことで、省人化と管理品質の両立、さらには管理費の適正化・削減につながっていく可能性が見えてきます。
更新日:2026/1/15