はじめに:第三者管理方式は“注目されているのに決められない”
マンション管理の現場では、役員のなり手不足や理事会運営の限界が、少しずつ「構造問題」になってきました。
その解決策として注目されるのが、第三者管理方式(外部管理者方式など)です。
ただ、今回のアンケート(管理組合・区分所有者向け、N=18)から見えてきたのは、単純な賛否ではありません。
多くの人が「気になる」「必要性はわかる」と言いながら、最後の意思決定で止まってしまう。
その理由は、制度そのものの良し悪しというより――
“任せた後にどうコントロールできるのか”が腹落ちしていないことにありました。
アンケート概要(N=18):どんな声が集まったか
回答は18件。女性10・男性8、年齢は30〜74歳(中央値47.5歳)で、居住地は首都圏が中心です(東京都7、神奈川3、千葉2、埼玉2など)。
対象マンションも、築5カ月〜築55年、19戸〜約500戸規模まで幅広く、築浅・小規模から高経年・大規模まで“前提条件が違う悩み”が混ざっています。
もちろんN=18なので統計的な一般化はできませんが、現場の論点を整理するには十分な手触りがありました。
2)導入状況:未検討が半数、それでも“関心はある”
導入状況を整理すると、次の通りです。
- 未検討:9(50%)
- 導入済:4(22%)
- 過去検討→見送り:2(11%)
- 検討中:1(6%)
- 保留:1(6%)
- 不明:1(6%)
未検討が半数ある一方で、自由記述には「役員負担が厳しい」「専門性が必要」「現状に限界」といった声が多く、“関心がないから未検討”とは限らないことがわかります。
むしろ、関心があるのに止まる。止まり方には典型があります。
それが 費用/合意形成/監督(見える化) の3点でつまずく、というパターンです。
3)期待されていることは4つに集約される
アンケートの声を束ねると、第三者管理方式に期待されていることは大きく4つでした。
役員のなり手不足・負担軽減(10/18)
理事会に割く時間、輪番でも当事者意識が育ちにくいこと、無関心層が増えることへの疲弊。
「住民同士だと言いにくいことを、事務的に進めたい」という声もあります。
これは“怠けたい”ではなく、持続可能な運営にしたいという切実さです。
専門性への期待(14/18)
特に強かったのがここです。
大規模修繕、見積の妥当性、相場観、交渉力。
「長期的に専門知が必要」「知識がない担当に丸投げは不安」といった感覚が、立場を問わず共有されています。
公平性の担保(8/18)
偏った業者発注、中抜き、利益誘導への警戒。
“公平に決まる仕組み”を求める声は根強く、第三者管理方式に期待されるのは作業代行よりも透明性だと言えます。
運用品質の安定(6/18)
導入済の声も含め、「担当が変わると品質が落ちる」「決めたことが進まない」といった課題が出ています。つまり、制度設計だけでなく **運用の再現性(人に依存しない仕組み)**への期待もあります。
4)いちばんの不安は「制度」ではなく“ガバナンスが想像できない”こと
不安・課題として多かった論点は次の通りです(複数回答含む)。
- 費用・値上げ:15/18
- 合意形成・温度差:11/18
- 監督・見える化:8/18
- 利益相反・癒着:7/18
- 品質・人次第:6/18
- 解任・交代:4/18
- 責任の境界線:2/18
ここで大事なのは、費用が最大のボトルネックでありつつも、
実際にはその奥に 「任せたら見えなくなる」不安があることです。
第三者管理方式への抵抗は、「制度が怖い」というより、
- どこまで任せるのか(決裁)
- どう監督するのか(見える化)
- 誰の利益で動くのか(利益相反)
- ダメなときに降ろせるのか(解任・交代)
という **“ガバナンス設計が想像できない不安”**として語られています。
5)住民が求める「判断に必要な情報」6点セット
意思決定に必要だと求められた情報は、かなり共通していました。
- 費用相場・内訳:15/18
- 成功例・失敗例:11/18(特に「失敗例を隠さず」が刺さる)
- 契約例・条項:7/18
- 監督策(報告頻度、監査、チェック体制):7/18
- 責任分界(事故・損害・未収金などの線引き):7/18
- 比較ポイント(従来方式/管理会社任せ/第三者管理):7/18
- (補足)大規模修繕の妥当性判断:3/18
言い換えるなら、当事者が知りたいのは「任せるべきか」だけではありません。
**“任せた後に、住民側がどう握り続けられるか”**です。
まとめ:第三者管理方式を“前に進める”チェックリスト
最後に、検討を前に進めるための最低限のチェック項目をまとめます。
- 追加費用の上限と、費用内訳は説明できるか
- 決裁ルール(どこまで外部が決め、どこから住民が決めるか)は明確か
- 報告頻度・監査方法は決まっているか(“見える化”の設計)
- 利益相反の制御(発注ルール、紹介料、手数料の開示)はできるか
- 解任・交代の条件と手順は契約に入っているか
- 失敗事例と、その再発防止策まで説明できるか
- 第三者管理方式は、住民が弱くなる仕組みではなく、
- 住民が“監督できる形”を先に設計しておくほど強くなる仕組みです。
- 次の一歩は、賛否の議論を続けることではなく、
- 「任せた後のコントロールの設計図」を揃えることから始まります。

第三者管理方式は、住民が弱くなる仕組みではなく、
住民が“監督できる形”を先に設計しておくほど強くなる仕組みです。
次の一歩は、賛否ではなく「監督できる設計図」を手に入れることから始まります。