「誰が、なぜOKしたのか分からないんです」
これは、入居1年目で副理事長になったある理事の、最初の実感だった。
築年数の経った分譲マンション。
管理は大手管理会社に委託され、理事会も毎月きちんと開かれている。
一見、問題はなさそうに見える。
しかし現場に入って初めて見えたのは、
“判断の根拠が、どこにも残っていない”という現実だった。
「引っ越してきて1年。気づいたら副理事長になっていました。」
経験も引き継ぎもないまま、
意思決定の場に座ることになった理事。
そこで直面したのは、
過去の判断が分からないまま、
新たな判断を求められるという構造だった。
本記事では就任1年目の副理事長が直面した課題、
理事会運営の実態、
そして「AI管理人」に最も期待している役割を、
率直な言葉で紐解いていく。
入居1年目で副理事長になった理事が直面した、管理組合の現実
「過去が残っていない」──
Contents
目次
- 入居1年目で、いきなり副理事長に
- 管理は委託しているのに、判断は理事に戻ってくる
- 毎月のように起きる設備トラブル
- 「誰が、なぜOKしたのか分からない」問題
- 理事会運営に潜むダブルスタンダード
- 管理会社は“判断しない”
- 住民トラブルの線引きはどこまでか
- 明文化されていない運用が多すぎる
- 修繕積立金と駐車場問題という時限爆弾
- AI管理人に一番期待していること
- 全部は置き換えられない、という現実
- 「このままでは同じことが繰り返される」
1. 入居1年目で、いきなり副理事長に
――理事になった経緯を教えてください。
副理事長(以下、副):
引っ越してきて1年ほどで、
「次はあなたの番です」と言われました。
正直、覚悟はできていなかったです。
――理事経験は初めてだった?
副:
初めてです。
しかも副理事長。
何が起きているのか分からないまま、
意思決定側に座っている感覚でした。
2. 管理は委託しているのに、判断は理事に戻ってくる
――管理はすべて管理会社に委託されていますよね。
副:
そうなんですが、
「判断」だけは全部こちらに戻ってきます。
管理会社は手配や事務はやってくれますが、
「どうするか」は理事会判断。
特にお金が絡むと、
最終的には理事長・副理事長の判断になります。
3. 毎月のように起きる設備トラブル
――実際、どんな案件が多いですか。
副:
圧倒的に多いのは設備トラブルです。
- 機械式駐車場の故障(ほぼ毎月)
- エントランスの自動ドア停止
- 水漏れ(専有部・共用部とも)
入って1年で、
「今月は何も起きなかった」という月はありませんでした。
4. 「誰が、なぜOKしたのか分からない」問題
――一番困ったことは?
副:
過去の判断理由が分からないことです。
例えば、
駐車場のサイズ制限をオーバーしている車が
「なぜか使えている」。
新しい申請者にはNGを出すと、
「前はOKだった」と言われる。
――理由が分からない。
副:
はい。
誰が、どんな基準で、なぜOKしたのか。
議事録にも残っていない。
承認した人を責めたいわけじゃない。
でも、基準が分からないと判断できない。
5. 理事会運営に潜むダブルスタンダード
――意思決定の流れは明確ですか。
副:
実は曖昧です。
- 月1回の理事会で決める案件
- 間に合わず、理事長・副理事長判断になる案件
明確な線引きはありません。
「誰かが『いいんじゃないですか』と言ったら進む」
そんな空気感もあります。
6. 管理会社は“判断しない”
――管理会社は助言してくれますか。
副:
一般論は教えてくれますが、
踏み込んだ判断はしません。
「最終判断は管理組合でお願いします」
と言われることがほとんどです。
前例を聞いても、
「記録が残っていません」と言われることも多い
7. 住民トラブルの線引きはどこまでか
――住民同士のトラブル対応は?
副:
初めて、理事長宛に直接投函された苦情がありました。
内容は近隣トラブル。
でも共用部ではない。
最終的に、
「管理組合の管轄外。
当事者間で解決してください」
という文書を出しました。
――その判断も理事側。
副:
そうです。
誰も正解を教えてくれない。
8. 明文化されていない運用が多すぎる
――ルールは整備されていますか。
副:
管理規約と細則はあります。
でも、運用はかなりアナログです。
- 連絡窓口が人によって違う
- 集会室予約は管理人に口頭
- ペットの詳細ルールは口頭説明
問題が起きていないから、
明文化されてこなかったんだと思います。
9. 修繕積立金と駐車場問題という時限爆弾
――今後の大きな課題は?
副:
機械式駐車場です。
修繕費が高額なのに、
長期修繕計画に含まれていなかったことが分かりました。
積立金で出すのか、
利用者負担にするのか。
まだ決まっていません。
10. AI管理人に一番期待していること
――AIやデジタル管理人に何を期待しますか。
副:
一番は記録と検索です。
- 何を議論したか
- 誰が判断したか
- なぜその結論になったか
それが検索できる形で残っていれば、
次の理事も迷わない。
議論を始めるときに、
「過去に同じ議題はありませんか?」
と出てくるだけでも全然違います。
11. 全部は置き換えられない、という現実
――デジタル化の不安は?
副:
あります。
高齢の方もいるので、
電話や対面の窓口は残すべきだと思います。
全部を置き換えるのではなく、
判断と記録を支える役割を担ってほしい。
12. 「このままでは同じことが繰り返される」
――最後に、今感じていることを。
副:
このままだと、
理事が変わるたびに同じ議論を繰り返すと思います。
悪意はない。
でも記録がない。
だからこそ、
人が変わっても引き継がれる仕組みが必要だと
強く感じています。
おわりに
この副理事長の声は、
「今、多くの管理組合が置かれている現実」そのものだ。
経験がないまま理事になり、
判断を求められ、
過去の記録が見つからない。属人化を前提とした運営は、
すでに限界に近づいている。
