「10年に1回のはずなんです。でも、10年で3回やっていました。」──
輪番制で運営されるマンション管理。
本来であれば、理事長の役割は一度きりのはずだった。
しかし現実には、
後任が決まらない、
途中で大きな案件が発生する、
といった理由から、同じ人に負担が集中する。
中規模・低層のファミリー向けマンション。
一見すると穏やかで、深刻なトラブルも少ない。
それでも、元理事長が振り返るのは、
“問題が起きていないからこそ放置されてきた曖昧さ”だった。
本記事では、
輪番制で理事が入れ替わるマンションにおける、
暗黙ルール・引き継ぎ・判断の現場を、
実体験ベースで紐解いていく。
50戸マンション元理事長が語る、輪番制管理の限界と現実解
「ルールはある。でも、細かいところは決まっていない」
Contents
- 1 目次
- 2 1. 10年で3回、理事長を務めることになった理由
- 3 2. 小規模マンションならではの「回ってしまう」現実
- 4 3. 管理会社は頼れるが、最後は理事長判断
- 5 4. 機械式駐車場を廃止したときの意思決定
- 6 5. 「ルールはあるが、運用が追いついていない」領域
- 7 6. ゴミ出し・駐車場・共用部──暗黙ルールの温床
- 8 7. ベランダ・騒音・来客対応という“揉めやすい論点”
- 9 8. 1時間の引き継ぎで、すべては伝わらない
- 10 9. デジタル化したいが、どう進めればいいか分からない
- 11 10. AI管理人に期待している“ちょうどいい役割”
- 12 11. 全自動にはできない、という前提
- 13 12. 次に理事長をやる人のために残したいもの
- 14 おわりに
目次
- 10年で3回、理事長を務めることになった理由
- 小規模マンションならではの「回ってしまう」現実
- 管理会社は頼れるが、最後は理事長判断
- 機械式駐車場を廃止したときの意思決定
- 「ルールはあるが、運用が追いついていない」領域
- ゴミ出し・駐車場・共用部──暗黙ルールの温床
- ベランダ・騒音・来客対応という“揉めやすい論点”
- 1時間の引き継ぎで、すべては伝わらない
- デジタル化したいが、どう進めればいいか分からない
- AI管理人に期待している“ちょうどいい役割”
- 全自動にはできない、という前提
- 次に理事長をやる人のために残したいもの
1. 10年で3回、理事長を務めることになった理由
――理事長は輪番制ですよね。
元理事長(以下、元):
はい。輪番表上は10年に1回です。
でも実際には、
後任が決まらなかったり、
大きな案件が途中で入ったりして、
結果的に10年で3回やることになりました。
――断ることはできなかった?
元:
明文化されたルールはないんです。
だから、理事会内で「じゃあ誰がやる?」と話して決める。
押し付ける場合もあれば、
「じゃあ私がやります」と引き受ける場合もある。
そこは完全に人の判断ですね。
2. 小規模マンションならではの「回ってしまう」現実
――50戸規模だと、回りやすい?
元:
正直、回ってしまいます。
高齢で「もう無理です」という方、
賃貸に出していて連絡が取れない方、
海外に住んでいる方。
そういう人を除くと、
結局やれる人が限られてくる。
3. 管理会社は頼れるが、最後は理事長判断
――管理会社との役割分担は?
元:
基本は管理会社が一次対応です。
ただ、
「これは理事長判断になります」
という案件は必ず出てきます。
特に、
- 予算を超えるかどうか
- ルールに書いていない判断
このあたりは、最終的に理事長が決めます。
4. 機械式駐車場を廃止したときの意思決定
――大きな決断だったのでは?
元:
そうですね。
当初は
「機械式を維持して、外部に貸して収益を出す」
という方針でした。
でも、数年分の収支を洗い出してみると、
赤字だった。
「赤字なら、続ける意味がない」
そう判断して、廃止を決めました。
5. 「ルールはあるが、運用が追いついていない」領域
――規約や細則は整っていますか。
元:
あります。
ただ、細かいところまでは決めきれていません。
例えば、
- ゴミの“出し方”
- 来客用駐車場の使い方
- 共用部と専有部の境界
このあたりは、
暗黙の了解で回っている部分が多い。
6. ゴミ出し・駐車場・共用部──暗黙ルールの温床
――具体的に困るのは?
元:
ゴミですね。
- ペットボトルを袋に入れたまま出す
- キャップを外さない
- 粗大ゴミを早く出しすぎる
全部「悪意」ではないんです。
でも、
どこまで注意するか、
どこから強く言うか、
その基準が曖昧。
7. ベランダ・騒音・来客対応という“揉めやすい論点”
――苦情は多いですか?
元:
多くはないですが、
出るときは出ます。
- ベランダから水が落ちる
- 洗濯物にタバコの臭いがつく
- 夜10時以降の生活音
明文化されていないので、
その都度、丁寧に説明するしかない。
8. 1時間の引き継ぎで、すべては伝わらない
――引き継ぎはどうしていますか。
元:
1時間くらいの打ち合わせを1回やって、
「ここが申し送り事項です」と説明します。
あとは
「過去の議事録を読んでください」。
正直、
それで十分とは言えません。
9. デジタル化したいが、どう進めればいいか分からない
――アプリやデジタル化の話は出ていますか?
元:
出ています。
- 意見集約フォーム
- 駐車場や共用部の予約
- 掲示板のデジタル化
ただ、
「どう始めるか」が分からない。
10. AI管理人に期待している“ちょうどいい役割”
――AI管理人に期待することは?
元:
全部やってほしいわけではないです。
- よくある質問への一次対応
- 過去の議論や判断の検索
- 「なぜこうなったか」を時系列で見せる
それだけで、
理事も管理会社も、
かなり楽になると思います。
11. 全自動にはできない、という前提
――不安はありますか?
元:
あります。
高齢の方も多いので、
完全デジタルは無理。
だから、
人の窓口+デジタル補助
この形が現実的だと思います。
12. 次に理事長をやる人のために残したいもの
――最後に、次の理事長へ。
元:
「なぜこうなったか」が分かる記録です。
議事録だけじゃなく、
背景や判断理由まで含めた情報。
それがあれば、
理事長はもっと楽になる。
おわりに
この元理事長の声は、
「大きすぎず、小さすぎない」
多くのマンションが抱える現実を映している。
暗黙ルールで回ってきた管理は、
今まさに転換点にある。